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竜で探求な文字作品集です。
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【不定期連載中】
ジプシーのロザリオ new! 04/23
 最終的に踊×神 長編






【D/Q/4】
二面性 1 2 3  神、他三名
無くした音  神、踊
褐色肌の猫 神、踊。超短
sweet night 神、踊バレンタイン話
不定期配信番組モンバーバラ☆ナイト 神、踊
ほしいもの 神、踊
花占い 神、踊
突然~プロローグ~  神、踊
アタシの歌を聴け! 神、踊
笑いの才能  神、踊
ホフマンの日記  宿
present  神、踊、占
左耳の重み 男勇、シン
帰りたい 占、踊
好き嫌い 神、踊
クリフトさま 神、踊
表彰式 神、踊、姫
宿屋会議 宿、その他

【D/Q/1】
最強の姫 勇、姫
発売20周年記念漫才 勇、姫
勇者専用待機所 4ひえた、おっ゜て

【D/Q/2】
復活の呪文相談室 死神、その他
王子 M ロレ、サマ
休戦 ロレ、ムン
悪魔族出世秘話~呪文~ 
青の守り神 炎&氷

【D/Q/3】
結成 飛猫、地獄鋏
わたしのともだち 阿漕商人

【D/Q/6】
奴の名はG ゲントの人、他三名

[2005/08/22 02:47] | TOP | page top
ジプシーのロザリオ TOP
ジプシーのロザリオ


最終的にクリフトとマーニャが結ばれる予定の物語です。
このカップリングに抵抗のある方は、閲覧をお控え下さい。

FC版に準拠してます。
18禁要素はありません。全年齢OKです。


なお、序盤では二人の仲がなかなか進みません。
そんな微妙な時期を長々読むのヤダ! という方には、18話あたりから読むことをオススメ致します。


作品中では飲酒の年齢制限を設けていませんが、
日本では20歳未満の飲酒が禁じられています。






【 プロローグ 】

――――――novel編――――――

【 ミントス~ 】 

【 大海原~ 】 10 11 12 13 14 15

【 モンバーバラ~】 16 17 18 19 20 21 22 23

【 コーミズ西の洞窟~ 】 24 25 25.5 26 27 28 29 30 31

【 サラン~ 】 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42

【 間奏曲~インテルメッツオ~ 】

【 スタンシアラ~ 】 43 44 45 46

――――――story編――――――

【 スタンシアラ~ 】 1 2new! 04/23







[2006/09/21 17:49] | ジプロザ | page top
ジプシーのロザリオ プロローグ
いつの間にか彼はアタシの心身に、ごく当たり前に存在していた。

顔色蒼くてひょろひょろして気も力も弱そうで頼りにならなそうな温室育ちの神官。
それが第一印象だった。
彼に初めて逢ったミントスの宿屋からだいぶ後になるまでその印象は変わらなかった。
彼は自分の主人である亜麻色巻き毛の美人お姫様にホの字だったようで。
本人の口から聞いたわけじゃなかったけど、そんなの一目瞭然だ。
カミサマは、主人への報われない片想いをひたかくしにする方法なんて教えちゃくれなかったらしい。
アタシたち「ミチビカレシモノタチ」の中で神官の想いに気付かない人間なんて一人しかいなかった。
当の美人お姫様だ。
カミサマって奴を恨んだりしないのかしらね、あの青い神官ちゃんは。
よし、彼の扱いは決まり。たまにお姫様への淡い恋心をつついて反応を楽しむ。
満場一致でけって~い。ってもひとりしかいないけどさ。

そんな風にすら思っていた。

できることなら、もう一度あの頃に戻りたい。

……無理よね。わかってるわよ。
サントハイムでにっくきバルザックのバカを倒してから、マグマの杖で岩を溶かしたついさっきまで色々考えたわ。
もうひとりの自分が否定してきたわ。
止めておけ、って。
あの人の心を支配しているのはお姫様だから。アタシの入る余地はナシだよ、って。
勘違い、思い間違い。もしそうでなくても一時のはしかみたいなものだ、きっと。

カゼひいて熱の下がらないアタシの心をなだめようと努力したよ。

でも、ダメだった。

カゼじゃなかったし、熱も下がらない。


アタシ、アンタのことが……。

 

 

――或る日のマーニャのメモより――







なんということだ。
自分で自分に驚いている。
まさか、こんな日が来るとは。


私という人間を成している要素はふたつだと考えてきた。
ひとつは、神官であること。神の教えを学び修行に励み、世の人々に伝え広め、救っていくのだ。
物心ついた時から神官としての人生は決まっていた。それ以外の職に就くなど考えすら浮かばなかった。

そしてもうひとつは……。
内に秘めたる想い。
姫様をお慕いするこの気持ち。
私につらく苦しい思いをさせるが、同時に暖かく優しい感情をもたらすもの。
どうしようもない胸の高鳴りを生み出すもの。
私を幸福に満たしてくれた、大切な大切なもの。

私という人間を成しているふたつの要素。

そのうちのひとつが、消えた。
無くなるかもしれないという予感は正直、少し、あった。
確固たる存在をありありと示し、長年に渡って抱えてきたそれが薄らいでいくのをここ数十日間感じていた。

戸惑わずにはいられなかった。
それは、あって当然なもので、無くなった自分など想像もできなかった。
朝起きてから夜眠りにつくまで、ふたつの要素は私の頭から心から身体から離れることは決してなかったのだ。

それが。
もう、今の私には無い。
ひめさま、と愛しかった人を呼んでみた。
そう。もう過去形なのだ……。



ロザリオを盗んだ犯人を捕らえたら。
その時は彼女に気持ちを伝えよう。
私の最も大切な人となった、褐色の肌の彼女に。



――或る日のクリフトのメモより――

 

 



神官と踊り子。
一見全く気の合いそうにないふたりは、
導かれし運命に巻き込まれながら、
互いに惹かれていく。
 
勉学と信仰を友としてきた白い手と、
舞踏と酒を友としてきた褐色の手は、
次第に近づき、やがて、つながっていく――。





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[2011/08/21 17:50] | ジプロザ | page top
ジプシーのロザリオ 1
毛並みの良い雌馬の引く馬車がミントスの町に辿り着いた。
町の入り口付近をたまたま数人が通りがかる。彼らは馬車の様子を目にするや否や、ぎょっとした顔で固まったまま、少しずつ四方八方に散っていった。
「あっれーっ? お兄さんたち逃げちゃったぁ? なんでかしらねえ」
馬車の先頭を切る褐色肌の美女がのんびりした口調で首をかしげる。
男性陣の目のやり場を失わせる薄布の衣装。ばぁんと強調された二つの膨らみは豊かで、プロポーションもいい。
彼女、マーニャは『踊り子』という庶民の目の保養的な職業に就いているのである。
「姉さん……本気で言ってるの? それ……」
馬車の片側から静かな、だがはっきりと怒りのこもった声が踊り子の耳に届く。
「本気もホンキ。大ホンキよん? このセクシーナイスバディなあたしが登場したってのに、逃げるってコマンドはないんじゃないのかしらん? ミネアがきっつい眼で睨みつけたからなんじゃ?」
どうやら本当に町人の逃げ出した理由がわからないらしい踊り子マーニャを、妹・ミネアが心底げんなりして見つめる。
肌の色と顔立ちは似ているが、その着衣は対照的だ。露出的な姉に対し、ミネアの方は床を引きずるほど長い衣装に身を包んでいる。職業も占い師という、これまた姉と対照的なものだ。
「どう考えたって、姉さんがわけのわからない鼻唄うたってお酒臭い息で闊歩しながら町に入ろうとしたからでしょう! だいたいね、わたしがきっつい眼をしなきゃならないのは姉さんがちゃらんぽらんだからなのよ! 占いで得た収入だってカジノやお酒に使ってしまうし、夜遅くなっても帰ってこないし、気になって探しに出たら知らない人と一緒になって夜風に吹かれて大の字になってるし……」
ミネアは美しい顔を歪ませて不平不満を爆発させている。
姉へのクレームは尽きない。
事実マーニャは相当破天荒な性格で、堅実な妹の悩みのタネとなっていた。
今回も姉の意味不明な行動が人様を驚かせてしまったのだろうと、身内の行いに責任を感じていたのだ。
が、町人が姿を消したのには、ミネアにも原因があったのである。
当の本人はそのことに気づいてないな、と、ジプシーの美人姉妹を見守る二人の人間は思っていた。
姉妹に比べて影の薄い二人――緑髪に片耳ピアスの若者ユウと、紫と白の宿屋風服を纏った青年ホフマンである。
彼らはどちらからともなく目をあわせ、出会ってから何十度目かの苦笑を漏らした。
旅の戦士には程遠い容姿の美女二人は、頑丈なはぐれメタルの盾を携えていた。
これでは変わり者一味と勘違いされても文句は言えまい。

ジプシーの姉妹とユウ、ホフマンに、御者席から降りた武器屋トルネコを加えた五人。
彼らは北にある港町コナンベリーから、船でこの大陸へとやってきた。
世界に詳しい老人を訪れるためである。
また、女性でありながら武勇に秀でたサントハイムの姫・アリーナも船でこの地に向かったという話である。
世界を救う勇者であるユウの敵・デスピサロを怪しいと睨んでいる姫ならば、味方になってくれるのではないか。
そんな希望も生まれていたのである。

まずは情報を集めましょう、というトルネコの提案で、一行はミントス中を歩き回り始めた。
「トルネコさんが仲間になって下さってから、物事を決めるのが早くなった気がしますね」
ミネアが喜びを表す。他の仲間もうんうんとうなずく。
一人でならすんなり決まる行動も、数人が合わさった団体では決定に時間を食うというのはよくある。現にマーニャ、ミネア、ユウの三人で旅していた頃は、右に行くか左を選ぶかという選択に数十分の時間を費やしたりしていた。マーニャが思いつきで選び、ミネアが慎重論を唱え、ユウは投げやりという見事な構図によるものだ。
ホフマンは己の立場を考えてか、あまり口を挟まない。よく喋る明るい青年ではあるが、重要な決定の際にはおとなしくしていた。
そこへトルネコが加わったのである。
武器商人の彼は、人を不快にさせることなく建設的な方向に話を持っていくのがうまい。押し付けるでもなく、人任せでもなく、適切な行動を素早く決定するのに一役買っていた。
「さすがトルネコさんですね! オレ勉強させていただく所がいっぱいありますよ」
宿屋の息子で年齢も若いホフマンは、トルネコを師匠のように尊敬していた。
トルネコは少し照れたように頬を赤らめた。人のいい所もまた彼のスキルであるらしい。

途中、剣の描かれた看板が近づいてきた。
「武器と防具は覗いてみますか?」
トルネコが促す。
「アタシいらないわ。はぐメタの盾ちゃんがあるし」
「わたしも結構です。はぐれメタルの盾がありますから」
ジプシーの姉妹による一刀両断で、武器防具店は素通りに決まった。
アネイルでもコナンベリーでも、彼ら一行は武器防具屋の扉にすら触れなかったのである。
「ユウちゃんの裏技で手に入れたあの盾があれば当分大丈夫よねー」
「本当に、あんなに優れた防具を身につけられるなんて。ユウさまさまだわ」
見た目が怖いというユウたちの助言により、姉妹が携えていた高性能な盾は馬車に留まった。
町中なら危険度は低い。
「ユウちゃん、以前聞いたかもしれないけどどうやってカジノであんなに大儲けしたのさ? 盾に変える前に80万枚以上コイン持ってたわよねえ」
「わたしも気になってたわ。ずっと山奥の村で過ごしてたユウさんがどうやって、って」
姉妹はかつてエンドールにて投げかけたことのある質問を再びぶつけてみた。
しかし疑問の対象人物は黙って微笑んでいる。
緑色の髪をかきあげ、風の流れにまかせた後、
「裏技ってモンがあるのさ」
と、一言決めた。
「是非とも教わりたかったわぁ。そのウラ技」
「姉さんは欲を出して失敗しそうな気がするけどね」
何かユウには秘密があるのだろう、姉妹はそれ以上詮索しなかった。
以前質問した際も、返答は全く一緒だったのである。
「裏技ってモンがあるのさ」
と。
おかげで姉妹は高性能な盾だけでなく、素早さを飛躍的に伸ばす『星降る腕輪』や、魔法の力を回復させる『祈りの指輪』の恩恵を受けているので、深い尋問はしないのだった。

「そろそろ暗くなりますし、宿を取りましょうか。皆さんもお疲れでしょうしね」
案内人の域に達したトルネコが先頭になって、一行は宿屋へと足を向けた。


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[2011/08/21 17:50] | ジプロザ | page top
ジプシーのロザリオ 2
宿は、一行が立ち寄ってきた町村の宿泊施設とは少し異なっていた。
建物の規模もさることながら、他の店と最も違うのは、従業員の勤務態度であろう。
いらっしゃいませ、長旅お疲れ様でした、ごゆっくりおくつろぎ下さい……。
宿屋の基本接客用語が飛び交っているが、これまで立ち寄った宿で耳にしたものと本当に同じ言葉なのかと疑いたくなる位に活気が違う。ひとつひとつの挨拶に心からのウェルカムが込められている。
従業員ひとりひとりの笑顔も、まるでホイミかベホイミの効果を発しているかのよう。旅疲れを消し去ってくれるさわやかなものだ。
彼らは、初見の者でも容易に理解できるほどに実に生き生きと働いていた。
「いい宿なんですね、ここは。私も自分の商売に使うのならばこういう人たちを選びたいですよ」
商売柄人材を見る眼に肥えたトルネコがそう言うのだから間違いはない。
栄養がまわっているのは体内だけじゃないんだな……とトルネコ本人が聞いたら怒りそうなことを、ユウはそっと思った。

「いらっしゃいませ。ご宿泊でよろしいでしょうか」
二、三言葉を交わしただけですぐに部屋への案内に移った。仕事が早い。
若い従業員の先導で階段を登って二階に差し掛かった時、一行がはたと足を止めた。
緑を基調とした衣装を纏った小柄な老人が、二階フロアをとぼとぼと歩いている。がっくりと頭を落として、気のせいか濃い影まで見えるようだ。
「お客様、お加減をどうかされましたか」
先導していた従業員が、腰をかがめて老人に声をかける。
が、老人は何も答えない。
従業員はハッとして、一礼を残すと再びユウ一行の先導となり歩みを進めた。
老人もまた、すぐそばの扉から部屋へと消えていった。
一行はそれぞれの好奇心レベルで消えた老人に興味を抱いた。それと、突如事情を思い出したらしい先導者にも。
しかし今宵のベッドの場所がわからなければ休息を取ることができない。今は若い従業員の後を付いていくのが先決だ。

「気になるわよね?」
「そりゃまあね」
「何か様子がおかしかったようですし」
「宿の人も途中から訳知り顔になってましたよ」
「あれは只ならぬ様子でした!」
部屋に通され荷物を置いたとたん、夕食より風呂より何よりユウ一行が相談したのは、もちろんあのうなだれたナゾの老人のことである。
彼は階段に最も近い角部屋へと消えていったのだ。
「仲間になる人かもしれませんね!」
「可能性低そうだけどね。ねえ、ミネアの占いでどうにかならないの?」
「わたしの占いは人間測定器じゃないわよ姉さん」
「デスピサロを倒すのに、あんな爺さん仲間になるのかな」
「どうでしょうね。人の力量は見た目ではないですから」
五種五様の主張がこんがらがっていたが、五人ともあの老人が気になっている。
「オレはあの人絶対仲間だと信じますよ!」
ホフマンが右拳をぐっと握り締めて断言した。
彼は友人に裏切られすさんだ日々を送っていたのだが、ユウたちの持ち寄せた『信じる心』なる宝石の力により、文字通り信じる心を取り戻したのである。結局友人の裏切りではなく魔物の仕業だったという事実も、ユウたち三人から教えてもらったのだ。
「仲間入りする可能性がゼロとは言わないわよ。だけどおじいちゃんだからねーあれは。アタシたちと一緒に魔物を倒すのには役不足じゃないのかね」
やや冷静なのはマーニャである。
豊かな胸の前で腕組みをし、首をやや右に傾けて疑問のポーズを作っている。
「そんなことないですよ! あの悲しそうな瞳の奥に、オレたちと同じ熱くたぎる何かを感じましたしっ!」
ホフマンの瞳孔には炎が宿っていた。それも、メラメラに燃え滾る暑っ苦しいものが。
踊り子はなんとも複雑な顔で熱さをしのいでいる。他人を全く信じられないよりは信じられる方がいい、とは彼女も思っている。だけどもこの青年は裏切り小僧の被害者だったのだ。マーニャ自身、ユウの偽者に追いかけられた。事情を知った後もしばらくは後遺症で猜疑心が少し強くなってしまったのだ。
ずっと裏切り小僧の呪いに縛られたホフマンなのに、あまりにも簡単に人を信じすぎやしないだろうか。
初めて会った時の猜疑心を凝縮したような暗い暗い眼と、現在のキラキラと輝く何の疑いも知らない
瞳のギャップがあまりにも大きい。
ホフマンに対して『信じる心』の効果があまりに絶大すぎたんだ、とマーニャは己の中で結論づけた。
「じゃあ賭ける? アタシは仲間にならない方に15ゴールド」
「ならオレは仲間になる方に30ゴールド!」
「ふっ、ふん。ならアタシは更に60ゴールド出すわよ」
「マーニャさんがそうくるなら思い切って100ゴールド賭けますよ!」
賭けは急激にエスカレートしていった。
「二人とも賭けなんてしないで。不謹慎よ、世界を救う仲間かどうかを賭けるなんて!」
生真面目なミネアが二人のヒートアップを止めに入る。
神秘的な女占い師に賭けという俗物的なものは本来無縁のはずなのだ。
彼女の場合、実の姉がその『無縁なはずのもの』に浸かりきっているので、嫌でも触れざるを得ないのである。
当のホフマンとマーニャには、ミネアの言葉など届いていない。あっという間に賭け金の額は四桁にまで跳ね上がってしまった。
普段物静かなミネアは、本気で怒らせると般若よりも怖い。が、言い換えれば正気を保っている間の彼女はそんなに恐ろしい存在ではない。したがって、まだ本気モードではないミネアが二人の賭けを止めるのは不可能なのだ。
「ユウ、姉さんたちを止めて! あのままじゃ何か失ってはいけないものまで賭け始めそうだわっ」
ミネアは勇者に助けを求めた。
一行のリーダーであるユウが仲裁に入るのは当然と言えよう。
ユウは両手を組んでベキボキと骨を鳴らし、エスカレートの中心へ、ゆっくり進んでいった。
「ホフマン、マーニャ」
リーダーの落ち着いた呼びかけに、宿屋の息子と美人踊り子は沈黙した。
部屋がしーんと静まり返る。防音が効いているのか、外や上からの騒音が一切聞こえない。
水を打ったような静けさがまばたき十回分ほど続いた。
ユウは感情のない穏やかな視線を、まずホフマンに向ける。しばらく止めた後スライドし、今度はマーニャへと向ける。
踊り子の肩に片手をそっと置いて、彼は一言告げた。



「仲間にならない方に1200ゴールド」



ミネアはその時忘れていた。
ユウが80万枚ものコインを『裏技』で手に入れた若者だったということを。
「じゃああたしは仲間になる方に1500ゴールドにしましょうかね」
トルネコまでが賭けに参加表明した。

かくしてミネア以外の四人それぞれのベットタイムが終了した。
「さあ行くよ。なんとしてもあのおじいちゃんには仲間候補から外れてもらわなきゃね」
先頭を切ったマーニャは殺気立っている。
勢いよく開けた扉があやうく通行宿泊人に当たりそうになり、一同はヒヤッとした。
カジノのスロットで負けが続いて躍起になっている時と似たような状態だ、と妹は姉の姿に大きな不安を抱かずにいられない。
しかも、賭けているのは1枚20ゴールドのコインなんかではない。
マーニャはエスカレートの果てに、とんでもないものを賭けてしまったのである。
『失ってはいけないものまで賭け始めそう』という妹の予感が的中してしまったのだ。



一行は自室を出て、老人の部屋へと向かった。


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